
政府による退職金課税の見直し議論が注目を集めている。老後のライフプランに影響することも考えられる。まずは会社の制度を知り、退職金の「手取り」を計算してみることが大切だ。AERA 2023年9月18日号より。
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退職金や企業年金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の高橋昭さんが言う。
「退職金の増税論議が明らかになって以来、セミナー参加者の意識の変化を感じます」
政府が今年の「骨太の方針」に、「退職所得税制を見直す」と明記したことは本誌7月24日号で報じた。勤続年数が長くなると控除額が増額される仕組みが見直される可能性があるとする内容だったが、そのことをセミナーで解説すると参加者の表情が引き締まるというのだ。
「厳しい増税もあり得ることを知り、それに備えたライフプランを立てなければと思うのでしょうね。逆に、運用益の非課税措置など資産形成の有力手段であるNISAやiDeCoの話題になると身を乗り出してきます」(高橋さん)
退職金は年金で受け取れる会社もあれば、年金と一時金併用で受け取れる会社もある。
退職給付のもう一つの柱である「企業年金」は、あらかじめ給付額が決まっている「確定給付企業年金」(DB)と、従業員側の運用しだいで給付額が変わる「企業型確定拠出年金」(企業型DC)が双璧だ。
会社の制度ではないが、資産形成のために近年、国の制度整備が進む「iDeCo」(個人型確定拠出年金)もあわせて考える必要があるだろう。iDeCo以外は規約次第だが、一時金、年金、併用可の三つのもらい方がある。