例えば、デザイナーとして働いていた女性が結婚や出産を機に仕事を辞めざるを得なかった場合でも、クラウドソーシングならば、子育てをしながら「自分の空いた時間に自分のペース」で仕事を受注することが可能だ。結婚後、夫の転勤で仕事を辞めざるを得なかった人でも、在宅で仕事を続けるチャンスにつながる。
経済産業省でもクラウドソーシングを活用しているという。今年1月に発表された「日本ベンチャー大賞」のロゴ、パンフレットのデザインは、実際にクラウドソーシングで受発注を行ったという。
経済産業省・経済産業政策局新規産業室の石井芳明・新規事業調整官は、クラウドソーシングの可能性について、こう話す
「これまでの働き方は、“会社”を中心に成り立っていましたが、“人”を中心とした働き方を提供する手段としてクラウドソーシングは優れています。地方で埋もれている人材、出産や育児などによって会社で働きにくくなった人材を活用できる仕組みです。また、地域企業が、クラウドソーシングでデザインやIT活用といった不得意な分野を補えば、新たな成長も期待できる。企業誘致による従来型の地域振興ではなく、地方で働く場を育て、強い地域企業を育成するという意味で、クラウドソーシングに期待しています」
その一方で、石井氏は課題も口にする。
「もっとも懸念する点は、仕事の価値が“値崩れ”することです。極端に安い単価を提示している例もある。質の高い仕事がそれに見合った適正価格に落ちつけばいいのですが。そこは業界の工夫に期待しています」
まだまだ課題は多そうなクラウドソーシング。ただ、企業力の地域格差が縮小されるなど、その可能性も大きい。今後の動向に注目だ。
(ライター・里田実彦)