※写真はイメージです(Getty Images)

 人工知能(AI)が目覚ましい速度で進化を遂げている。リスクが指摘されることも多く、今年5月には、対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発した米オープンAIの最高経営責任者(CEO)や研究者らが、「AIが人類を滅亡させるリスク」について声明を発表したことが話題となった。北海道大学客員教授の小川和也氏は、著書『人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未来』(朝日新書)の中で、未来のAIが、人間を“退化”させるリスクについて警鐘を鳴らしている。技術が正しく扱われなかった場合の人類が直面しうる「最悪な末路」とは。本書から一部抜粋して紹介する。

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「知能の侵食」で人間は退化していく

 AIの進化と軌を一にする形で、人類は〝退化〞の道を歩み始める危険性がある。生成系AIのように便利で身近なAIに依存するようになると、人間の思考が人工知能に寄っていくと言われることがあるが、これは「問い」の設定以外はAI任せで、自分の頭で考える機会が減っていくことが一因だ。AIが出した解を採用することが増えるにつれ、人間の思考を経ない解となり、同調していく。

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小川和也

小川和也

北海道大学産学・地域協働推進機構客員教授。グランドデザイン株式会社CEO。専門は人工知能を用いた社会システムデザイン。人工知能関連特許多数。フューチャリストとしてテクノロジーを基点に未来のあり方を提唱。著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は教科書や入試問題に数多く採用され、テクノロジー教育を担っている。

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人類は進化を諦めかねない