異常気象に見舞われているのは日本だけではない。イギリスでは気温が激変している。海外書き人クラブのメンバーが報告する。AERA 2023年9月11日号より。
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EUの機関である「コペルニクス気候変動サービス」の8月8日の発表によると、23年7月の世界の気温は観測史上どの年のどの月よりも高かった。1991年から2020年の7月の平均よりも0.72度、2番目に暑かった2019年よりも0.32度も暑かった。
猛暑が続くヨーロッパ大陸とは対照的にまるで「乱高下」とでも呼べるような状態になったのがイギリスだ。
「今年に入ってからずっと寒く、春の訪れも感じないまま5月を迎えたのですが、6月に急転。暑くなり平均気温が15.8度に達しました。これは1884年以来、観測史上最高の記録です」と語るのはイギリス在住のパーリーメイさん。
イギリス気象庁の発表によると高気圧に覆われた6月の平均気温は、91年から2020年の平均気温と比べてなんと2.5度も高かったという。逆に降雨量は例年の68パーセントしかなかった。当然7月や8月も熱波が予想されたという。
ところが7月には逆に低気圧が停滞。平均気温は例年より0.3度低いだけだったが、降雨量は1.7倍に達した。
とはいえイギリスはここ数年ずっと「涼しい夏」に見舞われたわけではない。22年は高気圧に覆われた「猛暑と洪水の夏」だった。
イングランド東部のリンカンシャーでは同国観測史上初の40.3度を記録。グレートブリテン島南西部のウェールズや北部のスコットランドでは7月に100年ぶりともいわれる未曽有の暑さが数週間続いたのち、洪水が起きた。
予想を超える「異常気象」に襲われる世界。「日常」を求めるのはもはや高望みなのだろうか。(ジャーナリスト・柳沢有紀夫=海外書き人クラブ)
※AERA 2023年9月11日号より抜粋