そして再び、

「会場建設及び海外パビリオンの建設について楽観できる状況にはありません」

 と危機感を強調した上で、

「意思疎通をさらに強化」「契約締結に向けた取り組みを加速していく必要」「施工環境の改善にも取り組んでいく必要」

 などと足りていない点を列挙し、

「大阪府、大阪市の協力が不可欠な課題」

 と“名指し”で訴えた。

 こうして、あいさつの最初から中盤にかけては、「このままでは開催が危うい」といった危機感を何度もあおるとともに、現実的な課題を突きつけ、改善点を示した。

 そして、具体的に政府主導の動きに言及したのは後半だ。

万博の会場となる夢洲(2023年7月31日現在)

最高幹部を協会に送り込んで協会掌握へ

「万博の準備を円滑に進めていくためには、博覧会協会の体制強化が必須です」

 と述べ、

「これまで60名近くの職員を政府から派遣していますが、このたび財務省、経産省から局長級の派遣を始め、各省が要所要所に幹部を派遣することといたします」

 と説明した。

「局長級」といえば、中央省庁では、事務次官、審議官に次ぐナンバー3の立場だ。

 こうした最高幹部を送り込むということは、表現こそ「オールジャパン一丸となって」「関係者一丸となって」などとやわらかい言い回しをしているが、要は「政府が完全にコントロールする」と言っているのに等しい。

 そしてあいさつの最後に、その政府のトップたる岸田首相が、

「私も政府の先頭に立ちます」

 と語気を強め、出席者に「ご協力を」と言って締めくくった。

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