藤原:ええ。でも、なぜそれが、執筆のきっかけに?
孫:AIの躍進にワクワクする一方で、「ならば、人間はどう生きるべきか」について仲間たちとずっと議論していたんです。そんな中で、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が起きた。ステイホームを余儀なくされ、自宅でじっくり読書する時間が生まれまして。以前から探究したかった哲学的なテーマについて、300冊ほどの本を読みまくりながら、自分の考えをノートに書き続けました。そのうち、特に若い世代にそれらを届けたくなったんです。少しでも読みやすくなればとイラストやリストも加え、工夫を凝らした一冊になりました。
藤原:なるほど。まるでゲームのように、さまざまな問いがこの本には仕掛けられてますよね。印象的だったのが、「能力という名の信仰」という節。知能や才能など、僕らが勉強する目的として当たり前のように使っている言葉に、孫さんはずばり疑問を投げかけた。「そもそも能力ってなんだろう」と。
孫:たとえばスポーツの世界なら、能力主義は必須だと思うんです。ルールがあって、その中でスコアやパフォーマンスを競い合うわけですから。でも、一般の社会はスポーツじゃないんですよね。一人ひとりにいろんな生き方があっていいわけで、決められたルールなんてありません。ゴールだってあるわけじゃない。つまり、同じ基軸で評価されるべきものではないんです。