思えば14年前、突如テレビに女装した巨大な男が現れた時も、似たような困惑が世間には起こっていたはずです。たった一夜にして、「ミッツ・マングローブ」が健全な時間帯のテレビ住人になったのも、そう言えば暑い暑い夏の出来事でした。私も、マツコ・デラックスも、ナジャ・グランディーバも、「大物外タレ」のような名前にしたくて付けた芸名です。

 そんな連中が、本物の電波に乗り、メディアの活字に載るようになったのですから、当時の中高年の方たちは、さぞかし戸惑われたに違いなく。それでもこんなふざけた名前を、そして風体を、世間の方たちはよくぞ面白がり憶えてくれたものです。
 

 名前と言えば、忘れてはならない人がもうひとりいます。ナオト・インティライミさんです。当時、トンチンカンな芸名で社会に認知されてしまった私にとって、誰よりも心強かった御方。

「ナオト・インティライミ」と「ミッツ・マングローブ」。音数も中黒の位置も一緒。今でもたまにふたつの名前が並んでいるのを見ると、戦後日本の自由社会を実感させられます。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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