――呉監督の短編「私の一週間」は、杏さん演じるシングルマザーの1週間を描く。朝から小さな台所で手際よく食事を作り、掃除洗濯をし、自転車で保育園と仕事場へとダッシュする日常が実にリアルだ。
杏:ここまで正面から「普通のお母さん」を描いた映像ってないんじゃないかなと思います。セットではなく本物のアパートで撮ったので、水回りとかもとてもリアルです。
呉:子育ての日常に「名もなき家事」がどれほどあるのかを見てほしかったんですよね。おそらく夫に「今日は大変だったんだ」と言ってもわかってもらえないから。もちろん自分と同じような立場にある人たちに「明日も頑張ろうか」と思ってもらえるような、ある種のエールにもしたかったんですけど。
「作らなきゃ愛情じゃない」
――3月にニューヨークの国連総会ホールで行われた試写会では「日本の作品が一番よかった」「泣いた」と感想が寄せられた。
呉:嬉しいですね。どの作品もそれぞれの国の文化と、コロナも含めた時代の移り変わりを見られる意味のある作品ばかりで、そこに自分が参加できたということが誇らしいです。
杏:日本人のリアルな生活を海外に見せることができた点でも意義があると思います。子どもが「行ってきます」と一人で学校に行くのも驚かれると思うし、なにより「日本のママってこんなにご飯を作っているんだ!」とびっくりすると思う。