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「吉本興業がテレビ界を支配している」という陰謀論めいた話をしたいわけではない。単なる客観的事実を述べているだけだ。吉本芸人があらゆるバラエティ番組に出ているのは、個々人の実力や事務所の影響力を考えれば当然のことである。
しかし、あらゆるバラエティ番組が1つの事務所に頼りすぎてしまうのは健全なことではない。どの番組を見ても同じような顔ぶれが出ているという印象を視聴者に与えるのも望ましいことではないだろう。そこで、吉本興業以外の芸人を軸にしてバラエティ番組を作れないか、という発想が出てくる。
佐久間氏は、テレビ東京でおぎやはぎ、劇団ひとりという「非吉本芸人」と組んで『ゴッドタン』という番組を立ち上げて、それを伝説的な人気番組に押し上げてきた実績がある。当時のテレビ東京では吉本興業が全面的に制作に携わる『やりすぎコージー』がお笑い番組のエース的な存在だった。そこで新機軸の番組を成功に導いたのが佐久間氏だったのだ。
ここ数年、フジテレビは視聴率競争に負け続け、低迷を続けてきた。どちらかと言うと、かつてのフジテレビは圧倒的な知名度や実績のある人気タレントをキャスティングして、その「威光」を頼りにバラエティ番組を作ることが多かった。一昔前はそれが功を奏していたのだが、最近ではそれでも数字が取れないケースが目立っていた。
しかし、今年の『FNS27時間テレビ』などを見る限りでは、フジテレビも徐々に戦略を変えている気がする。キャスティング優先で番組を作るこれまでの「横綱相撲」のスタイルを捨てて、挑戦者として泥臭く目の前の結果をつかみに来ている。
フジテレビが佐久間氏を起用したのも、吉本興業に頼らない新しい形のバラエティ番組を作りたいという決意の表れだろう。いろいろな意味での挑戦を含んでいる『オドオド×ハラハラ』に期待が高まるばかりだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)
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