どんなスポーツもエロ目線込みで観てきた者として、高校野球というのは、中でも邪な見方をしてはいけない聖域です。横浜高の松坂大輔も、早稲田実業高の斎藤佑樹(ハンカチ王子)も、花巻東高の大谷翔平も、秋田の金足農業高の吉田輝星も、こと甲子園球児たちに対しては、固くエロ自制の念を発動させながら観るため、正直私の入る隙などどこにもないのが現実です。
 

 そんなことを考えながら母校の甲子園初戦を家のテレビで観ていました。それでもやっぱり、ひたむきに白球を追うユニフォーム姿の10代の男子は、ただただ眩しい。倫理と道徳心を胸に抱きながらも、視線はどうしても、浅黒く灼けた太い腕や、汗が滴る首筋を追ってしまいます。

 ふと、バッターボックスに立つ慶應の選手が、同級生の息子であるのに気付きました。愕然とするとともに、ずっと騙し騙しで観ていた高校野球に、ついに結界を見た気分になりました。

 あの武骨で硬派な美青年だった彼の息子が甲子園に出ている。

 私は歯を抜いたついでに舌まで切られて悶絶している。
 

 48年の人生の中で唯一の男子校だった高校3年間は、私の性に多大なる影響を与えた3年間でもありました。彼の息子がレフトへのタイムリーツーベースを打った瞬間、私の男子校生活も終わった気がしました。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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