それよりも困るのが歯の痛みです。厳密に言うと、奥歯を抜くために歯を削っていたドリルが、手元が狂ったか何かで、内側歯ぐきからUの字を描くように奥舌の裏を、えぐるように切ってしまったのです。かなりの量の麻酔を打っていましたが、切られた瞬間は、真剣で粘膜を切開される激痛が走りました。

 その帰り道、麻酔が切れた私の奥歯と舌周辺は、とてつもない激痛に襲われ、まったくもって身動きが取れなくなってしまったではないですか! 車内のごみ袋にゆっくりと唾を吐くと、まるでコクととろみのあるトマトジュースのような液体が次々と糸を引いて落ちてきます。

「このまま舌足らずのスローテンポ口調になったら、清水ミチコさんや松村邦洋さん辺りが物まねしてくれたりするかしら?」などと想像しながらも、激痛・鈍痛のあまり、「水いりますか?」などと気にかけてくれるマネージャーを、手で追い払ってしまいました。が死ぬ時、誰にも見られまいと独りになろうとする気持ちが少しだけ理解できたような気がします。

 かくして、この連載も少しだけ締め切りを延ばして頂き、少量の流動食と鎮痛剤と抗生剤でどうにか切り抜けている次第です。
 

 せっかく新調したパソコンも、奇跡の生還を果たした2テラバイトにも上るエロ画像コレクションたちにも手をつけず、仕事以外はひたすら寝ている毎日。

 ある日、目が覚めると、高校・大学時代の友人たちから「観てる?」「来てる?」「暑いね!」といったメッセージがいくつも届いていました。「観てる?って何を?」と返すと、「試合始まってるよ!」と再びレスが。

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