日本のサッカーの土台は、学校の部活文化である。

「中体連(日本中学校体育連盟)や高体連との調整が難しいのはもちろんのこと、現場の選手、監督、コーチに聞くと、暑くてもできる、サッカーをやりたいと言う。そこで育ってきた選手は非常に多いので、彼らの声は絶対に無視することはできません。そのなかで、どうやって夏場にサッカーをやらないカレンダーをつくるのか。非常に難しい問題です」

「苦しい」胸の内

 JFAの熱中症に対する取り組みはスポーツ界のなかでは先進的といえる。

 しかし、サッカー界の内部からは、熱中症対策ガイドラインに対する批判が、発表当時から今も続いている。

「われわれは、WBGTが31度を超えたら試合は原則禁止です、と言っています。それに対して、『JFAは熱中症で死亡事故が起こったときに、このガイドラインを盾に責任を回避するんでしょう』みたいなことを相当言われてきました」

 実際、WBGTが31度を超えても、なかなか進行中の試合を中止することはできない。

「それについて、『JFAはどう見ているのか』という問い合わせをこの夏、たくさんいただいた。でも、『それは現場が悪い』ということは絶対に言いたくない。無責任なのが一番よくない。『やむを得ず試合を行う場合は万全を期してください、というのがガイドラインです』と言うしかない。でも、『それで事故が起こったらどうするのか』と返されると、とても苦しい」

 熱中症事故を防ぐ抜本的な対策は、夏場にサッカーをしないことだ。そもそも、子どもたちにとって、夏にサッカーをやる意味がどれほどあるのか。根性論ではなく、科学的なデータにもとづいた議論を深めていきたいという。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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