夏はサッカーをやめよう

 一方、ガイドラインの設定や開催地の変更は、所詮「付け焼き刃的な対策」にすぎないと言う。抜本的に熱中症事故を防ぐには「活動シーズンを変えるというところまで踏み込んでいかなければならないと考えています」。

 その根底にあるのは「そもそも、夏にサッカーをやる必要性があるのか」という疑問だ。

「夏場にサッカーをやることが、本当に子どもたちのためになっているのか、ということです。Jリーグの監督も言っていますが、夏場はサッカーのクオリティーが下がる。体力を温存する『省エネのサッカー』になってしまう。スプリントの回数が少ないなど、データのうえでもそれは明らかです」

 サッカーは頭脳スポーツでもある。ところが、炎天下で試合をすると、判断力が落ちてしまうのだ。

「すると、『考えないサッカー』になってしまう。そんなサッカーでいいのか、という議論がユース育成の部会などで行われています」
 

 ちなみに米国の大学スポーツは、秋・冬・春だけに活動を行う「シーズン制」である。夏場の活動を停止するだけでなく、シーズン中の練習量にも厳しい上限規制が設けられている。にもかかわらず、米国はスポーツ大国であり続ける。

「今、Jリーグについては、夏の暑い時期はなるべくシーズンオフにする、という議論をしています。これがうまくいけば、夏はサッカーをやめましょう、という考え方が広まるかもしれません」

 一方、「それは非常に難しい」とも言う。

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ガイドラインへの批判