国際紛争の現場で、戦闘をやめさせる交渉や平和を維持するための仕事に携わってきた著者が、18人の高校生を相手に行った連続講義をまとめた。
 教室では多くの問いが投げかけられる。「日本の平和は何のおかげ?」「内戦や紛争に他国が介入する理由は?」。テロとの戦い、「自衛」と戦争の関係、集団的自衛権と「国連的措置」(集団安全保障)、国連による武力行使のジレンマなど様々な事例をもとに話し合う。東ティモールでは反体制ゲリラを掃討したが、シエラレオネの新政府ではゲリラ出身者を厚遇した著者。どの対立でも双方に言い分があり、争いを収めるために不平等な手段を取らざるを得ないこともあったという。
 国や民族同士の対立はなくならず、万能の解決策もない。「悪者を作るのは正義の側だ」という言葉が印象に残った。「どんな『正義』の熱狂のなかにあっても、僕らの正義を『悪』のほうから見ようとする少数意見」が大事だと説く。自分の正義に熱狂せず、他者の事情に思いを馳せることから始めるしかないのだと思う。

週刊朝日 2015年4月17日号