民間警備会社の役員も、日本での要人の身辺警護の難しさをこう話す。
「警備会社の職員は相当訓練されており、警視庁の元SPなども雇っています。特殊警棒は持てますし、防弾チョッキ、防刃チョッキも着用でき、その場で犯人を制圧すれば、警察に引き渡すこともできます。しかし、犯人が銃を持っていた場合は、正直、お手上げです。銃で対抗できないので、もし犯人からホールドアップを要求されたら手を挙げないといけない。警察のSPと比べると、民間のボディーガードはかなり防御力が落ちると言わざるを得ません」
外交ルートで身辺警護の要請がなかった場合、日本の警察は動かないとの報道もあるが、現実的にはどうなるのか。
「日本の警察は、どこからも要請がないのに勝手に身辺警護をすることはないと思います。ただし、イベント会場に所轄の警察官を派遣することはあるかもしれません。人が多く集まる場所には、雑踏警備が必要になり、これは警察の仕事になります。2001年に兵庫県明石市で発生した花火大会歩道橋事故では、兵庫県警の警備体制の不備が問題となりました。それ以降、雑踏警備は警察にとって重要な任務の一つになっています。ヘンリー王子が出席するチャリティーイベントでも人が多く集まるのであれば、雑踏警備は当然、主催者とともに警察の仕事になります」(板橋氏)
では、主催者側はどう対応するのか。イベントを主催する国際スポーツ振興協会(ISPS)の担当者はAERA dot.の取材にこう回答した。
「イベントは3000人の入場者を予定しています。何かあったら警察も動けるように、警視庁と警察庁に連絡済みです。しかし、ヘンリー王子は王籍を離れた私人であり、警視庁も警察庁も、規則上、身辺警護はできません。それでも、社会的責任を鑑み、ISPSは警察と連携を密に取っています。その上で、会場周辺の警備は、ISPSが信頼できる民間警備会社に依頼してます。さらに、優れた身辺警護のプロを、数人配備しています。一方、身辺警護は、ヘンリー王子側が依頼した、優秀な警備会社が警護をするはずです。そのため、王子がいつ、どの便で来日し、どこに宿泊するかなどは一切公表されていません。われわれにも、知らされていません。これらは、セキュリティー上の対策であると同時に、パパラッチ対策でもあると思います。費用については、王子周辺の身辺警護は、王子側が支払い、会場警備はISPSが支払います」