「不正の温床になりうる」と専門家
実務上、お金を払った側が受け取った側に代って領収書の作成することはあり得る。グループ企業間の取引では会計担当者が同一というケースもあるかもしれない。しかし、会計の専門家はどう見るか。
公認会計士で税理士の三馬忠夫氏は、こう語る。
「領収書をあとから作るのは明らかに問題があります。政治資金の収支はその事実が発生したときに処理すべきであって、後日収支報告書を作成するために領収書を整えている行為は収支の事実を隠蔽することにもなり、透明性が問われる政治資金に関する処理としては不適切で、結果的に不正行為となります。
また、会計担当者が同じ人だとしても、あくまでも領収書を作成するのは、松井氏側の会計担当者でなければなりません。松心会側で作った、とする回答は不適切です。会計担当者が同じであれば、『松心会側で作る必要があった』と主張したとしても無理があるでしょう。細かいことですが、政治資金に対するモラルの乱れを感じる。こうした状況を許すと不正の温床となり得る」
そもそも政界では、ずさんな資金管理の実態があるようだ。
元国会議員秘書で、政治評論家の尾藤克之さんは「政治家の間では白紙で領収書をもらい、金額や日時をあとから書き加えることはよくある」と言う。また、「会計担当者は会計の専門家ではない人が多い」としたうえで、こう語る。
「会計担当者は金庫番とも呼ばれ、私設秘書が担うことが多いです。公設秘書は公務員で制約が多いですが、私設秘書は公務員ではないためです。議員の腹心が務めることが多いです。
また、後援会から紹介されたご令嬢なども多いです。『〇〇事務所秘書』の肩書が欲しい人たちです。能力のある人の場合はお茶くみをさせるわけにいかず、会計を任せたりします。いずれにしろ会計の専門家ではない。『あとで修正ができるので素人でも構わない』という意識があるように思います」
軽視されている会計処理
公認会計士・税理士で、国会議員の政治資金収支報告書などを監査している「登録政治資金監査人」でもある松山治幸氏は「政治資金の収支内容は分かりにくい。適当な処理方法でないと思っている」と打ち明ける。