松山氏によると、課題は多い。主に次の13点を指摘する。

1.複式簿記でない。貸借対照表がない。預かり金、貸付金、借入金が分かりにくい。現金預金残高も分かりにくい。
2.資金使途が分からない。領収書さえあればそれで済む。政治活動と関係のない支出もあってもわからない。追及がおろそか。
3.会計責任者は名前だけがある。適正な会計責任者でないケースがある。
4.国会議員関係団体以外は5万円以下の支出はその内容の記載が不要になっている。
5.収支報告書の開示が遅すぎる。12月決算であるのもかかわらず開示は翌年11月。
6.政治団体の解散等の場合の資金の行方等の顛末がわかりにくい。
7.預金残高は資金が本当にあるのか疑問。収支報告書では資金残高があるが、実際には資金があるのかどうか疑わしい。残高証明による確認があるのか。
8.政治資金監査制度は不十分。機能していない。
9.政治家は幾つもの政治団体を所持しており、政治団体間での資金移動もあるが、別々に報告書をつくりわかりにくい。連結決算が必要。
10.政治家が保持する政治団体がどこかわかりにくい。政治団体にコードを設けることも必要。
11.政治資金報告書をネットで公開していない自治体がある。(昨年度時点で新潟、石川、広島、福岡の4県)
12.定期公表以外の収支報告書があり、それらがいつ公表されるのかわからない。
13.パーティー券は事実上寄付であると見られるものがある。

 松山氏は、

「政治家は会計処理を軽視しているように感じますし、収支報告書も重要視していないように思います。資金管理も不十分で、聞くところによると内部統制も欠け、秘書の不正も想定される。こうした状況は改善していく必要があります」

 と訴える。

 日大法学部の専任講師、安野修右さんもこう指摘する。

「少なくとも政治家というのは、社会に対してある種の模範を示さないといけません。松井氏といえば、民間などの常識を政界にも取り入れることを是としている政党の代表者であった人。その責任も一層大きいものなのではないかと思います」

 改めて政界から襟を正していくことが求められていると言えそうだ。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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