前大阪市長の松井一郎氏=4月24日、大阪市北区

「存在しない日付の領収書がある」――。SNS上で6月、こんな投稿が話題になった。領収書の日付は「令和1年3月」。令和は5月から始まるので、存在しない日付だ。そしてこの領収書は、前大阪市長の松井一郎氏の資金管理団体「松心会」が受け取ったものだった。どういった経緯で、この領収書が作成されたのか。取材をすると、ずさんな会計の実態が浮き彫りになってきた。

【写真】ありえない日付が書かれた領収書はこちら

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 領収書がSNSに投稿されたのは6月下旬。ポストマン開示請求クラスタ(Twitter(現X)アカウント名)さんが、

〈令和1年は5月1日からなのにどうしてなのか?? 説明が必要だろう〉

 とツイートした。

 領収書の宛名は「松心会」、金額は「300万円」、ただし書きは「寄附」となっている。日付は、書き直されたような形跡があって判別が難しい部分があるが、「令和1年3月15日」のようだ。

 領収書の発行者の名前には「松井一郎」と書かれており、松心会が松井氏に300万円の寄付をした記録ということになる。
 

 いったい何のお金なのか。

 松心会の令和1年分の収支報告書を見ると、「選挙関係費」として、「平成31年3月15日」に松井氏に300万円の支出をしたことが記載されている。

 松井氏はこの年の4月に実施された大阪市長選で立候補して当選しており、そのときの選挙費用とみられる。その際に作られた「選挙運動費用収支報告書」には、松心会から寄付として300万円を受け取ったと記されている。

 しかし、日付の間違え方からすると、授受の際にすぐ領収書を発行しなかったことがうかがえる。

 政治資金問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「普段からずさんな会計管理が行われていたのではないか」と見る。

 領収書は金銭のやりとりが行われた際に作成し、その場で難しくても、後日すみやかに発行されるべきものだ。また、政治資金規正法では政治団体側の領収書の受け取り義務を規定している。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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「ずさんな会計処理」との指摘