※写真はイメージです(写真/Getty Images)

老いた親が施設に入居してからも、事故や病気など、親の身辺にはいろいろなことが起こり得ます。子どもたちは施設からの連絡を受けて、そのたびに対処法を考えることになりますが、場合によっては施設側の対応に「あれ?」と疑問を感じることも。「こんなサインが続いたら、退去を考えて」と介護アドバイザーの髙口光子さんは言います。そのサインとは?

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ちょっとしたケガでも、報告はほしい

 施設での親の生活を、居心地よく安心で安全なものに保つには、施設のスタッフとなんでも話し合って一つのチームになっていくことが必要です。しかし時には、突発的な出来事に直面して、信頼感が揺らぐことがあります。

元気がでる介護研究所代表 高口光子

 たとえば、久しぶりに面会に行ったら、母親のひたいにあざがあった、父親が足をひきずっていた、というような場合です。

 あざの原因を尋ねると、「自室のドアにぶつかられたんです」との答え。大事には至っていないようですが、やはりあざをつくった日に、なんらかの報告がほしかったなと、あなたは思います。痛む足を病院で診てもらったのか聞くと、「おとうさまが大丈夫とおっしゃるので、様子をみています」との回答。これもやはり、調子が悪くなった日に「整形外科にお連れしましょうか」の相談がほしいところです。

 こういう考え方の相違があった場合、「次からはすぐに連絡してください」と要望を出すのがいいでしょう。通常は改善されて、心配はなくなります。

こんなサインは退去を考える

 しかし要望を出しても改善がみられず、次のようなことが続いたら、施設からの退去を考えてもよいかもしれません。

▼むやみな事故が多い

 面会に行くたびにどこかにあざがある、数カ月の間に何度も繰り返されるような場合は、要注意です。

▼すぐに連絡してこない

 生活のなかでちょっとしたケガや事故は起こるものです。このこと自体はあまり問題ではありません。しかしすぐに連絡してこないのは問題です。「先ほど、昼食をのどに詰まらせたのですが、大丈夫でした」「ほかの入居者とぶつかって転びました。ひざのあざですみました」など、取り急ぎの一報を入れるのが一般的です。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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