インフルエンサー Mayoさん/1994年生まれ、福岡県出身。大阪大学外国語学部ヒンディー語専攻に在学中、デリーに1年留学。卒業後、外資系企業などを経て、2018年からYouTuberとして活動(撮影/写真映像部・松永卓也)

 インド人が多く住んでいる「リトルインディア」とも呼ばれる東京・西葛西。今、これまでで一番、盛り上がりを見せているという。何が起きているのか。「日印つなぐインフルエンサー」として活動するユーチューバーのMayoさんと西葛西を歩いた。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

【写真】チャンドラニさんが経営する「スパイスマジック カルカッタ本店」

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 東京都江戸川区の西葛西。インド食材店やインド料理レストラン、雑貨店が点在し、周辺には現在約3千人のインド人が暮らす「リトルインディア」とも呼ばれるエリアだ。インド人が増え始めたきっかけは、コンピューターの誤作動が懸念された「2000年問題」。日本の官公庁や企業がインドから呼び寄せた多くのIT技術者が、勤務先に通いやすい場所として、西葛西を選んだのだという。

 インドが世界を席巻する中、日本の「リトルインディア」にも変化があるのだろうか。「日印つなぐインフルエンサー」として活動するユーチューバーのMayoさん(29)と西葛西を歩いた。

チャンドラニさんが経営する「スパイスマジック カルカッタ本店」。西葛西にインド人が増え始めた1997年にオープンした(撮影/写真映像部・松永卓也)

日印互いへの熱

「インドが好きだという日本のお客様が増えました。スナック菓子やスパイス、レンズ豆が人気です」

 堪能な日本語でそう話すのは、インド食材店「スワガット インディアン バザール」の店主、パラサード・ビーネーゼさん(58)。06年、友人に誘われて来日して以来、ずっと店頭に立ち続けてきた。

「当初は、こんなに長くできると思っていませんでした。日本を旅行するインド人も増え、彼らも西葛西にやってくる。今までで一番、街が盛り上がっています」(ビーネーゼさん)

 サリー姿のMayoさんも、その言葉にうなずき、

「日本にインドブームは間違いなくきています。逆に、日本を知りたいというインド人も増えています」

 ネイティブ並みにヒンディー語を話すMayoさんが18年12月に立ち上げたYouTubeチャンネル「Mayo Japan」の登録者数は、現在276万人。この1年で一気に100万人増えたといい、日本とインドのお互いの熱の高まりがうかがえる。

 1978年に26歳で来日し、「リトルインディアの父」と呼ばれる貿易商のジャグモハン・S・チャンドラニさん(70)は、

「ここ数年、インドとインド人に対する印象がマインドチェンジしてきたことを感じます」

 と感慨深そうに話す。長年、日本をはじめ世界でインドが報じられるとすれば、「道を野良牛が歩いている」といった日常を面白おかしく切り取ったり、貧しさを強調したりするものが目立った。チャンドラニさんも81年に紅茶店「シャンティ紅茶」を西葛西でオープンさせた頃は、信用を得るまでに時間がかかったという。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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