当事者からも基本法の成立を評価する声があがった。
15年前から認知症当事者として意見を発信してきた藤田和子さん(61)は、「これまでは認知症の人を支援する側に視点を置いた施策が多かったように思います。しかし、支援者側からみた対策法となると、自分が認知症になった時のことを考えるきっかけにはならず、『自分ごと』にはなりません。当事者である自分たちも声を出し続け、それを受け止めて一緒に考えてくれた人たちがいた。こうした法案成立の過程が大事だったと思います」
国は認知症予防について「『予防』とは、『認知症にならない』という意味ではなく『認知症になるのを遅らせる』『認知症になっても進行を緩やかにする』という意味である」と定義している。超早期発見だったという藤田さんは周囲には隠さず、必要な人に伝えたことで早くから周囲の協力を得て、「暮らしの中で工夫を重ね、できることを続けられている」という。(ライター・大崎百紀)
※AERA 2023年8月7日号より抜粋