認知症の人がスタッフとして接客する催し「まあいいかCafe」の様子。注文が違っても「まあいいか」と受け入れ、認知症の人が活躍できる社会を目指す取り組みだ
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 2年後には、国内の認知症患者は約700万人になる見通しだ。「予防」はもちろん、認知症になった人が暮らしやすい社会であるかどうかが問われている。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

【図】「認知症基本法」の5本柱はこちら

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 6月14日は「認知症予防の日」だ。北九州市に事務局を置く日本認知症予防学会(以下、予防学会)が2017年、アルツハイマー病を発見したアルツハイマー博士の誕生日にちなんで制定した。それに先立つ11日、都内で開かれた「予防の日」関連の式典に登壇した自民党の鈴木隼人衆院議員は、「認知症が予防できる社会を作りたい」と力を込めた。

 その3日後の14日、国会では参院本会議で「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が全会一致で可決、成立した。たとえ認知症になっても社会から孤立したり、生きづらさを抱えたりすることのないよう、支え合う仕組みを作り、当事者が希望をもって暮らせる。そんな社会の実現に向けた基本法だ。

「認知症予防の会」の代表も務める鈴木氏は認知症施策に強い関心を持ち、14年に国会議員となった。「認知症に関する基本法が必要だ」と言い続け、超党派でつくる議連の事務局長として法案成立に尽力した。

 鈴木氏は言う。

「これまでは政府が認知症対策の計画を作り、必要な予算を充ててきたが、この法律ができたことで、今後は各自治体で計画が策定されるようになる。たとえば同じ県の中でも、ある町ではできていたことがこの町ではできていない、ということが起こり得る。各地域の対策が『見える化』されれば、それを平準化していくプロセスが生まれ、認知症の人の暮らしにおける不平等さが解決されていく」

AERA 2023年8月7日号より

 国会で認知症施策の重要性を訴え、国家戦略の策定を求めた公明党副代表の古屋範子衆院議員は、「2025年に認知症の人は700万人に増えると見られている。我が国にとって最大の課題と言っていい」と語気を強める。

 認知症をだれもが自分ごとと考え、認知症になった一人ひとりの尊厳を守り、社会の一員として尊重する。その実現には認知症基本法の制定が不可欠と考えて、21年に超党派の議連を立ち上げ、鈴木氏らと、当事者や有識者の声に耳を傾けてきた。

「基本法は、この大きな課題に関して国が、高齢者らが認知症になっても尊厳を保って安心して希望をもって暮らせる社会を作る、共生社会を作る、という旗を掲げることになる。本当に大きな意味があると思います」(古屋氏)

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