「ここ10年ほど、地球温暖化の影響で梅雨時期の水害が明らかに起きやすくなっています。海面温度が高くなったことで南からくる水蒸気の量が増え、雨の降り方も総雨量も激甚化しているのです。今年は『スーパーエルニーニョ』の発生が予測されていますが必ずしもそれによるものではなく、長期的な温暖化の影響が顕在化してきたと言えます。7月の豪雨はもはや特殊な事例ではない。毎年起こると思っていたほうがいいでしょう」
今後は水害が起きるエリアにも変化が考えられる。
「気候変動モデルを使った予測を見ると、将来的には東シナ海からやってくる水蒸気がより日本海へ入りこみ、北の方へ流れやすくなってきます。今年は富山や秋田で水害がありましたが、今後はこうしたエリアやさらに北でも水害の警戒が必要になってくるでしょう」
日本の治水計画はこれまで、過去の雨量をもとに設計されてきた。ただ、近年の激しい雨はそれを容易に上回ってきた。降雨量が1.1倍になると、平均的な傾向として河川流量は1.2倍、洪水発生頻度は2倍になる。これは産業革命期と比べて地球の平均気温が2度上昇した場合の想定で、国土交通省は近年、河川整備基本方針の考え方にこの気候変動モデルを用いるようになった。
「過去のデータで50年に1度と言われるような大雨も、これからさらに頻発するようになります。国交省は治水計画の見直しを進めていますが、従来のように『ダムと堤防が身を守ってくれる』という考え方は通用しなくなる。川は溢れる前提で、地域全体でいかに助かるかを考えなければ太刀打ちできません」(中北教授)
(編集部・川口穣)
※AERA 2023年8月7日号