※写真はイメージです(Getty Images)
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 人間関係力の乏しい人たちが増えている。特に仕事から離れた高齢者は、会話もない日常を送る人々も少なくない。家庭ですら居場所を失った人の現状とは。心理学者の榎本博明氏の新著『60歳からめきめき元気になる人 「退職不安」を吹き飛ばす秘訣』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、紹介する。

【写真】世界初の孤独担当大臣を置いた英国の孤独対策とは

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ある日を境に通う場所がなくなる

 定年退職を迎えた人にとって、あるいは定年退職を数年後に迎えるという人にとって、とくに大きな問題となるのは、何十年も毎日のように通ってきた職場に行く必要がなくなることである。

 ずっと同じ職場に通い続けたという人ばかりでなく、転勤でいろんな土地にある職場に通ったという人も、転職でいくつかの違う会社に通ったという人も、毎日のように通う場所があったことに変わりはない。

 それが、ある日を境にして、通う場所がなくなるのである。習慣によって朝早く目が覚めてしまっても、行くところがないのである。だれでも戸惑うはずだ。

 それは、人生における最大の変化と言っても過言ではない。最大の変化は最大のストレスとなる。まさに危機的状況を迎えることになる。

 とくに職場が居場所だった人にとって、定年退職は大きな危機となる。居場所がなくなるのである。家庭が主な居場所であった人や、趣味の集まりや勉強の集まりなど職場の外に主な居場所があった人はまだマシかもしれないが、とくに用事がなくても職場に出てきたり、勤務時間後も職場の仲間と食事や飲みに出かけるのが楽しみだったという人にとっては、心の支えだった居場所をいきなり失うことのダメージは計り知れない。

 2018年にイギリスで、世界で初めて孤独担当大臣というものが誕生したのは大きな話題になったが、イギリスでは孤独対策として、慈善団体などによってメンズ・シェッド(男たちの小屋)という定年後の男性のための居場所づくりが行われている。定年を迎えた男性は孤独に陥りがちなので、そうした男性たちを引っ張り出して仲間と公園に置くベンチや遊具を作るなどのDIYに取り組んでもらうのだという(AERA 2022年3月7日号)。

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高齢者男性の2割は週に1回以下しか会話しない