最近の事例では、2020年8月に北海道紋別市のキャンプ場で、テント内で炭火を使っていた女性4人が一酸化炭素中毒とみられる症状を訴え、病院に搬送された。地域や場所によっては真夏でも夜や早朝は気温が低くなるため、火の不始末による事故が起きる場合がある。

 では、一酸化炭素中毒になるとどのような症状が出るのだろうか。以下の表を参考にしてほしい。

「重度レベルは一酸化炭素濃度と吸入時間によって変わります。初期症状としては軽い頭痛や息切れなどが多く、単なる疲労や睡眠不足と勘違いして見過ごされがちです。後遺症は重症であった場合のほうが起こりやすいと言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。そのため軽症に見えたからといって油断せず、適切な医療機関を受診することが大切です」(冨岡医師)

 冨岡医師によると、一酸化炭素中毒で病院に搬送され一度は回復したが、半年後に認知症になり、身動きが取れなくなった症例は少なくないという。このように遅れて症状が表れるものを「間歇(かんけつ)型一酸化炭素中毒」といい、治療は確立されていない。一酸化炭素中毒と診断されたら、少なくとも数日から1週間は激しい運動を避け、その後数カ月は様子を見る必要があるようだ。

高濃度の酸素を吸うことが唯一の治療法

 では、自分や家族・友人が一酸化炭素中毒かもしれないと思ったら、どのような行動を取るべきか。冨岡医師は、「確実な方法は酸素投与だけ」と断言する。

「火気設備・器具を使用している場合はすぐに中止し、その環境から離れ、新鮮な空気を吸わせてください。一酸化炭素は水で排出されませんので、水を飲ませたり、体を横にしたりする必要は一切ありません。とにかく酸素を吸うこと。そのために、一刻も早く適切な医療機関に搬送することです」


 市販の携帯型酸素吸入器は数分しか使用できないため、効果がないわけではないがやや心もとない。早めに病院へ行き高濃度の酸素を投与すべきだが、病院ならどこでも良いとは限らないので、注意が必要だ。

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