※写真はイメージです(写真/Getty Images)

夏のアウトドアで気を付けたい一酸化炭素中毒。重度の場合は後遺症や死につながる可能性があり、EXILEのATSUSHIも今年4月に一酸化炭素中毒の疑いで休養を発表した。確立した治療法はなく、病院ならどこでも良いわけではない。いざというときに慌てないための一酸化炭素中毒の対処法を救急医に聞く。

【図版】こんな症状が出たら要注意 一酸化炭素中毒の重症度別の症状

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 コロナによる行動制限もなくなり、本格的に「夏」を楽しめる年がやってきた。キャンプやサウナテントなど、火を使うレジャーで気を付けたいのが一酸化炭素中毒だ。換気をしないまま火気や燃焼機器を使用し続けると、酸素不足で不完全燃焼を起こし、人体にとって有害な気体である一酸化炭素(CO)発生の原因になる。初期症状は風邪と似ており、さらに無色・無臭なため、気づかぬうちに重症化しやすいのが特徴だ。

 2023年4月、EXILEのATSUSHIが一酸化炭素中毒の疑いで休養を発表した。詳細は明かされていないが、仕事関係者との会食後に体調不良を訴えたという。

 米盛病院(鹿児島県)副院長で、救急科の冨岡譲二医師は、換気が不十分な室内で一定濃度以上の煙を吸った場合、一酸化炭素中毒になる可能性は「十分にあり得る」と指摘する。

米盛病院(鹿児島県)副院長で、救急科の冨岡譲二医師

「厚生労働省の発表を見ると、事例として圧倒的に多いのは産業事故。工場や飲食店など、あらゆる場所で一酸化炭素中毒は起こり得ます。一酸化炭素は血液中で酸素を運搬するヘモグロビンと結合しやすく、細胞に溶け込んで体内に長く残るので、すぐに元の生活に戻るのではなく、しばらく安静を保つことは正しい判断だと思います」

 一酸化炭素中毒は回復したように見えても、数週間から数カ月後に記憶障害、運動障害、抑うつなどの後遺症に悩まされることもある。後遺症に対する治療は確立されていないため、正しい知識を身につけ、予防することが肝心だ。

回復したように見えても油断大敵。一酸化炭素中毒の症状

 さて、これからの時期はキャンプ場に出かける予定を立てている人も多いだろう。夏場は冬に比べるとテント内でストーブを使用する機会は少なく、さらに窓を開けていることが多い。とはいえ冨岡医師によると「夏は冬に比べて一酸化炭素中毒が起こりにくい」とは言い切れず、季節を問わず注意が必要だ。

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最近ではキャンプ場で炭火を使い一酸化炭素中毒も