街に人が戻ってきた。経済活動も活発になってきているが、足元では企業の倒産が目立っている(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 ようやくコロナ禍を抜け出し、経済活動も正常化したというムードが強まっている。ところが、足元では経営に行き詰まって力尽きる企業が急増中だ。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

【図版】くっきりと明暗が分かれた飲食業界

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 東京商工リサーチによれば、今年上半期(1~6月)における全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、2年連続で前年同期を超えたという。

 上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった。

 負債総額については、昨年上半期に大手自動車部品メーカーの大型倒産があったため、前年同期比で約45%減に。ただ、負債100億円以上が8件、1億円以上5億円未満が824件、5億円以上10億円未満が115件と、中堅規模の企業倒産が目立った。

 東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。

「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」

 同調査では産業別の倒産件数にもスポットを当てているが、10分類のすべてが前年同期を上回っていた。これは1998年上半期以来、25年ぶりのことだという。ちなみに、当時は大手金融機関が次々と経営破綻し、日本は深刻な金融危機に見舞われていた。

 地域別の倒産件数に目を向けても、けっして予断を許さない情勢にあると言えそうだ。

 同調査では全国を9地区に分類しているが、そのすべてにおいて前年同期を上回っていた。こちらは、ITバブルが崩壊した2000年上半期以来(23年ぶり)の現象とか。無論、突出しているのは企業数自体が多い関東や近畿だが、コロナ感染は全国に広がっただけに、地方企業の多くも苦しい情勢のようだ。

飲食業が特に深刻

 10分類中で最も倒産が多かったのは「サービス業他」の1351件(前年同期比36%増)で、全体の33.4%を占めていた。それに次ぐのが建設業の785件(同36.2%増)で、資材価格の高騰が経営の足を引っ張った一因と見られている。

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