国は2030年までに女性管理職の割合30%を目標に掲げている。女性管理職を推進する流れのなか、実際に管理職に就いた人はどう感じているのか。部長職に就任した40代女性に管理職の苦悩とやりがいを聞いた。AERA 2023年3月27日号の記事を紹介する。
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「はいはい、マネジャーさんのおっしゃることは、全て正しいに決まっていますよね」
とある上場企業のメーカーで、部長職であるマネジャーを務める女性(41)は、皮肉たっぷりな男性部下の態度を前に、「またきたか」とため息がこぼれた。現在のポジションに30代で抜擢されて2年。現在、26人の部下を束ねる。
管理職になって、大きく裁量が広がるとともに、責任も重くなった。毎月、目標となる数字を背負い、チームで達成に向かって試行錯誤を続ける。目下の悩みのタネが、事あるごとに皮肉めいた態度で接してくる年上の男性部下だ。部下は女性より8歳年上で社歴も長い。女性が自分と同じ課長職だった時は温厚な態度だったが、部長職に抜擢されて以降、態度が急変した。
部の会議でも、女性の前では常に仏頂面で、目を見て話そうとしない。仕事の進捗確認や報告を求めた時、舌打ちが聞こえたこともあった。何か指摘しようものなら、必ずと言っていいほど皮肉を交えて返してくる。そんな態度にほとほと嫌気がさすのだが、自分の部下に対しては面倒見が良く、取引先との関係性も良好だ。女性は言う。
「そうなる理由は、年下かつ女性である私が、彼の直属の上司であることが気にくわないのでしょう。部下の態度に辟易する日々ではありますが、最近『動じないのも仕事のうち』と割り切れるようになりました」
独身で子どもがおらず、“仕事に生きる女”といった陰口を言われていることも知っている。「これが男性なら、こんな陰口のたたかれ方はしない」と女性。「でも」と女性は前を向く。
「管理職になってから、このままキャリアを貫く人生も悪くないかもと思えるようになりました。もっと若い頃には、居酒屋で上司の愚痴ばかり言って仕事していた気になっていた時期もあったけれど、管理職になったら、そのエネルギーを改革に変えることができる。部下の態度や責任の重さに心が揺れる時もあるけれど、後輩に『私も管理職を目指したい』と思ってもらえるような存在になりたい」
(ライター・松岡かすみ)
※AERA 2023年3月27日号より抜粋