不審な死をとげた安田種雄さんの実父(右)(撮影/板垣聡旨)

 しかし、18年4月、事件は急展開を迎える。警視庁大塚署の女性刑事が現場で見つかった凶器とされるナイフの血の付き方に疑問を持ったことがきっかけだった。これを受け、警視庁は再捜査を開始した。

 捜査体制に関して、佐藤氏は週刊文春(7月27日発売号)で、「トクイチ[編集部注:警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第一係]十数人、サツイチ[編集部注:警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係]十数人、大塚署含めて三、四十人態勢だろ。これは特捜(特別捜査本部)並みの人数だよ」と語っている。警察も本腰を入れた捜査だったことがうかがえる。

 18年10月上旬、X子さんの実家の家宅捜索が行われ、佐藤氏によるX子さんへの任意の事情聴取も始まった。取り調べはおよそ10回に及んだという。また、木原氏も捜査員から任意の事情聴取を複数回受けていた。

 しかし、同年10月24日から開かれる臨時国会の開始直前に、佐藤氏は上司である管理官から捜査の終了を告げられたという。佐藤氏は週刊文春(7月27日発売号)でこう語っている。

「X子の調べが佳境を迎え『今から証拠を探そう』という矢先にストップした。十二年前の事件で物証が乏しいのは分かっているが、供述を揃え、証拠を積み重ねて頑張ろうというときに突然、中止になった。俺は捜査一課で百件近く調べをやってきたけど、これだけ流れができていたのに調べが取りやめになるなんて経験したことがない。悔しくて、頭にきたよな」

 さらに、同年11月には、事件に注力していた刑事が捜査から外された。それからほどなくして安田さんの父親は世田谷署に呼び出され、捜査の縮小を告げられたという。そして、19年5月、捜査はたった1年ほどで事実上の打ち切りになった。

 この不審死事件に関して、露木康浩・警察庁長官は今月13日に行われた記者会見で、「警視庁において捜査等の結果、証拠上、事件性が認められない旨を明らかにしている」と話し、既に自殺として決着はついていることを強調した。

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