しかし、記者会見で佐藤氏は語気強くこう話した。
「今回の事件の捜査の終わり方は異常ですよ。殺しの捜査は百件近く担当しているけど、今までこんな終わり方はない。結末を決めないとじゃないですか。要は、遺族への“締め”がないんですよ。『こういう理由で捜査を終えます』と説明することもなく、自然消滅みたいに終わっている。警視庁が自殺と認定しているのであれば、その理由を遺族に話すべきでしょう」
なぜ事件はこのような顛末を迎えてしまったのか。週刊文春が一連の報道で追及しているのが、捜査打ち切りの裏に木原氏の介入があったのではないか、という点だ。当時、木原氏は、自民党政務調査会副会長兼事務局長という要職に就いていた。
週刊文春(7月27日発売号)によると、木原氏はX子さんに対して、「俺が手を回しておいたから心配すんな」などと、捜査への介入を疑わせるような発言をしていたという。これに対し、木原氏は「(俺が手を回しておくなどの発言は)五年前の会話とのご指摘であり、確認のしようがありませんが、そのような趣旨のことを申し上げることはない」と同誌の取材に対して否定している。
佐藤氏は、「政治的なことはわからない」と前置きをしたうえで、記者会見でこう述べた。
「(木原氏の妻ということで)捜査がやりにくかったのは確か。すべての人を同じ風には扱えないですよ。いままでの経験上、警察は捜査に慎重になり、ハードルが上がるというのはある。それでサツイチを入れたわけですから」
安田さんの遺族は、大塚署に再捜査を上申している。再捜査を行われる可能性について、佐藤氏は「個人的には難しいと思う」と話す。
「警察庁のトップが自殺だと言っているわけですから、長官の発言は重いですよ。でも自殺とする十分な説明がなされていない。もし自殺と認定するんだったら、その理由を安田さんの遺族にきちんと説明すればいいじゃないですか」
遺族に続き、X子さんの取り調べをした警察官までもが記者会見を開くという、前代未聞の展開となった今回の事件。はたして、事件の真相が明らかになる日は来るか。
(AERAdot.編集部・唐澤俊介)