※写真はイメージです(写真/Getty Images)

外に出ると、じっとしているだけでも汗が流れるこの時季。発汗は体温を調節するために重要な機能ですが、日常生活に支障があるほどの大量の汗に悩まされる人もいます。汗をたくさんかく人とかかない人の違いや「多汗症」と診断される基準について、専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「多汗症」全3回の1回目です。

【チェックリスト】多汗症の判断基準はこちら

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「多汗症」2回目の記事:「大量の汗が対人関係に悪影響 手のひら、足の裏、わきの下… 多汗症がうつ傾向や不安障害を引き起こすことも」はこちら。
「多汗症」3回目の記事:「『あせも』はなぜ子どもにできやすい? 3つの理由と予防法を医師が解説 思春期の汗は制服で気になりだす」はこちら。


 私たちの体は、暑いときや運動時に体温が上がると、汗を出すことで皮膚表面を冷やし、体温を下げます。体温が上昇すると、脳の視床下部という部位から全身の皮膚にある汗腺(かんせん)に汗を出すように指令が出て、発汗するという仕組みです。汗をかけないと体の中の熱を外に逃がすことができず、熱中症の危険が高まります。つまり、汗を出すことは、健康を維持するために重要なことです。

 しかし同じ環境下にいても、汗をかきやすい人とかきにくい人がいます。この違いはどこからくるのでしょうか。発汗異常症を専門とする愛知医科大学病院皮膚科教授(特任)の大嶋雄一郎医師はこう話します。

「一般的に男性のほうが女性よりも汗をかきやすい傾向があります。男性ホルモンは発汗を促す働きがあり、女性ホルモンは発汗を抑える働きがあることが一因です。また、汗腺の働きは加齢によって低下していくので、高齢になると汗をかきにくくなります」

 そのほか、日ごろの生活習慣も影響するといいます。汗腺は全身に存在していますが、そのすべてが機能しているわけではありません。

「運動や入浴などによって汗をかく習慣がある人は、働く汗腺の割合が多く、汗をかきやすいと考えられています。6月くらいの暑い日に熱中症になりやすくなるのは、気温が低かった時季に汗をかいていなかったことで、汗腺が働きにくくなっていることが一因です」(大嶋医師)

発汗機能は2歳までに決まる?

 一方で、汗のかきやすさは2歳くらいまでに、ある程度は決まるという説もあります。汗の病気や小児皮膚科に詳しい池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子医師はこう話します。

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汗をかく環境で過ごしたほうがその後も汗をかきやすくなる