健康保険証の仕組みは、医療関係者や健康保険組合をはじめ、みんなで試行錯誤を繰り返しながら、約60年という長い年月をかけて培われてきました。そんな便利な仕組みが、マイナ保険証という突然浮上した政策によって崩壊しかねない状況に置かれているのです。
健康保険証は、会社員なら勤めている会社を辞めるまでずっと同じものが使えます。自営業者も、自治体によって異なりますが、1年や2年に一度、新しいものが送られてくる。病院では月に一度提示すれば、少ない費用で医療サービスが受けられます。
ところがマイナ保険証は、まずマイナンバーカードを作る手間がかかります。マイナンバーカードを作るには、郵便やネットなどを通じて申請し、市区町村の役所で受け取る必要があります。そのうえで、スマホやパソコンなどを使って健康保険証として使うための利用登録が必要になります。
厚生労働省は、マイナ保険証を持たない人に対しては「資格確認書」を交付する方向で検討中だと報じられていますが、確認書をもらう際にも、自分で申請したり手続きをしたりする必要があります。現在の保険証に比べて、すごく不便じゃないですか。
またマイナ保険証をなくしてしまった場合には、新しいものが発行されるまでに1~2カ月かかると言われています。この間、病気などになったら無保険の扱いで診療を受けなければならなくなる恐れもあります。
しかも、マイナンバーカードをめぐっては、別人の情報が登録されたり、希望していないのに健康保険証と勝手に一体化されたりといったトラブルが次々と明らかになっています。
こうしたトラブルのせいで損失が生じたらどうなるか。規約を見てみると、政府は責任を負いませんと書いてある。すごく無責任だと思いませんか。