岸田文雄首相(左)と河野太郎デジタル相

 政府は閉会中審査となった7月26日の参院特別委員会でも、マイナンバーカードへの一体化に伴い健康保険証を廃止するスケジュールを変えない姿勢を改めて示しました。

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 そもそも、廃止の方針を打ち出したのも唐突すぎますし、その後も当たり前の顔をして「廃止ありき」の姿勢で進めようとしています。

 マイナンバーカードの発行は本来、任意です。国民の側がメリットや便利さを感じたら、自発的に発行してもらう性質のものであるはずです。

 政府は6月末時点で7割まで普及が進んだと強調しますが、便利だから普及が進んだのではありません。カードの取得などによって最大2万円分のポイントがつく「マイナポイント」をやったことで発行が増えた面が大きいとみるべきです。

 政府がマイナポイント政策を打ち出したのは、明らかに普及を後押しするためです。裏を返せば、何もしなければ普及は進まない、つまり国民はマイナンバーカードにメリットを感じていないことが分かっているということです。

 国民が魅力を感じないような、しかも任意のカードを、健康保険証と一体化しようとしているのです。

 健康保険証は誰もが持っていなくては困るものです。にもかかわらず、任意であるはずのマイナンバーカードと一体化して、マイナンバーカードを使わざるを得ない状況に追い込む。強制的に発行を強いるようなもので、矛盾を感じます。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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