黒田東彦・日本銀行総裁は米国通で、世界の経済思想もよく知っていますから「これしかない」と考えたのでしょう。しかもグローバリズムのもとでは世界経済が繋がっているので、日本だけ独自の道をゆくといっても、その独自が何か誰にもわかりません。それだけのことです。しかし、政治はあくまで相対的なものでアベノミクスにも一定の評価はすべきだと思います。批判はいくらでもできますが、では他にどのような政策がありえたのか。あの程度でも、それまでと比べれば、かなり経済のムードを変えました。

――いや、やらない方がマシだったのではないですか。安倍政権によって財政は悪化しました。先の参院選では全野党が消費税廃止か消費税率引き下げを求めるような風潮を作ったのも安倍政権です。米FRBのバーナンキ元議長は、議長就任前には政府に「ヘリコプターマネーをばらまけ」と言っていましたが、自分が議長のときにそこまでやりませんでした。量的金融緩和はやりましたが、出口政策も考慮した、あるていど抑制の利いたものでした。しかし日本にはその後も「大胆にやれ」と言っていた。これでは日本市場を実験場扱いしたようなものです。それを真に受けたアベノミクスは日本に無責任さを蔓延させ、政治を壊してしまったのではないですか。    

佐伯:僕は、ほとんどあなたと結論は同じです。それを前提に、いくつか流れを確認しておきましょうか。アベノミクスがうまくいったかどうかは非常に難しい問題です。うまくいったという評価も、うまくいかなかったという評価も両方できる。はっきりしているのは当初見込みより、うまくいっていないことは明白です。

 株価が上がったのが成果と言えば成果で、株価を上げて資産所得を増加させて経済を引っ張ろうと考えたのでしょう。しかし資産効果はたいしたことがなく所得は増えませんでした。株価上昇も、米国に比べたら、たいしたことはありません。

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