6つの水槽で計最大6万匹あまりを育てられる(武州ガス提供)
6つの水槽で計最大6万匹あまりを育てられる(武州ガス提供)

 今夏の土用の丑の日は7月30日。暑い日が続き、夏バテ防止にウナギでも、と考える人もいるのではないか。そんななか、今年はいつもと一風違う商品がお目見えした。埼玉県の川越市や所沢市など同県西部で都市ガスを供給する「武州ガス」(川越市)が育てたウナギだ。7月6日に販売が始まった。

「武州うなぎ」のブランド名で、かば焼きにした冷凍品が通販サイト「楽天市場」で売られている。武州ガスの新事業開発部マネジャー、大河原宏真さんはこう話す。

「販売当初の3日間で約300尾の注文をいただくなど、おかげさまで幸先のよいスタートが切れました」

 ガス会社がウナギを育てると聞くと、意外な印象を受ける。どうしてウナギの養殖事業に乗り出したのか。大河原さんは言う。

「都市ガスの原料は天然ガスで、ほかの化石燃料に比べて使用時のCO2(二酸化炭素)の排出量は少ないとはいえ、事業を進めるうえで環境に負荷をかけているのは確か。国全体として『脱炭素社会』をめざすなかで、都市ガスの供給事業に匹敵する新しい事業を考える必要がありました」

 発端は社長の一声だった。もともとは営業関連の部署に勤めていた大河原さんが、新事業をつくるために2021年に新しくできた部署に配属されたときには戸惑いもあった。

「むちゃぶりだなと感じたこともありました(笑)。ただ私自身、釣りや魚が好きでしたので、どうせやるのなら一次産業として魚の養殖事業を手がけてみたいと考えました」

 ガスの供給先でもある川越市周辺など県内には、ウナギ料理の名店も多い。しかし、県内ではウナギの養殖は行われていなかった。そこでウナギの養殖に思い至ったという。

 いざゴーサインが出ると、社内からは驚きの声も上がった。ゼロからのスタートだったため、右も左も分からない。

 養殖事業に必要な設備やノウハウを調べるため全国の専門業者に問い合わせをしたりするうちに県内の「サイエンス・イノベーション」(さいたま市)という会社に行き着く。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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