2019年7月の参院選での河井克行元法相と妻の案里氏による大規模な買収事件で、元広島市議が東京地検特捜部の任意の事情聴取を受けた際に、検事が「不起訴にする」ことを示唆し、買収目的と認める供述を引き出していた疑いがあることがわかった。元市議の弁護人が記者会見し、録音データがあることを明らかにした。「検察ストーリー」に沿う、有利な供述を引き出そうとしていたという訴えは、ほかにも複数ある。
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この事件では、現金を受け取った県議や市議ら100人全員が不起訴となり、そのうち35人について検察審査会が「起訴相当」と議決。再捜査で34人が起訴(うち25人が略式起訴)されている。
河井夫妻はすでに有罪が確定しており、現在は、現金を受け取ったとされる一部の県議や市議らの裁判が続いている。
今回、30万円を受け取ったとされる元市議の弁護人の田上剛弁護士が7月21日に会見を開いた。元市議は2020年3~6月に計9回、任意で事情聴取を受けたという。
田上弁護士は、
「録音データには、不起訴を約束するかのような内容が入っています」
などと述べ、検事が元市議に対し、
「全面的に認めて、それで反省していることを出してもらって、何とか処分を不起訴であったり、できるだけ軽い処分にというふうに思っています」
などと伝えていたと話した。
元市議が録音をしたことについては、
「記憶の通り話しても認めてくれない。それどころか元市議自身が罰せられるようなことまで言う」
「(供述調書の)訂正、廃棄を頼んだけれども、それはできないと言われて、自己防衛のためもあって録音した」
などと説明した。
■県議の取り調べでも「検察ストーリー」
AERA dot.では、この一連の事件で「何度も『検察ストーリー』の押し付けを検事から求められた」という、渡辺典子・広島県議の取り調べ状況などを報じてきた。
渡辺県議も、今回とは別の検事による取り調べで、「検察ストーリー」にあてはめられる供述を押し付けられることを危惧し、自身で録音をしていたという。