宮崎駿(82)の10年ぶりの監督作「君たちはどう生きるか」が公開中だ。宣伝も事前情報もほぼなしで公開された作品を、私たちはどう見るべきか。AERA 2023年7月31日号より紹介する。
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7月14日(金)、公開初日の夕方、都内の映画館で「君たちはどう生きるか」を鑑賞した。当日午前中に座席を予約したが、その時の予約は2割ほど。「大丈夫か?」と思ったが、行ってみると席の7割が埋まっていた。小学生を連れた親の姿も見える。
■観客の賛否は分かれる
映画の舞台は戦時中の日本。主人公の少年・眞人は母を火事で亡くし、父の再婚相手である母の妹の実家にやってくる。そこで眞人は謎のアオサギに導かれ、冒険の世界へと足を踏み入れる。1937年に吉野源三郎によって書かれ、2017年に漫画化されて215万部の大ヒットを記録した同じタイトルの小説とは異なる内容だ。
「若い人、特にお子さんには難しいかもしれない」と鑑賞した男性(32)は言う。
「観る人に多様に解釈してもらうことを要求しているのかなと思います。自分はジブリファンの間でも評判のよくない『ゲド戦記』の世界観や考えさせる感じも好きなので、満足度は80点くらい。あと2、3回観て理解を深めるつもりです」
一方、「よくわからなかった」と首をかしげて笑うのは「ハウルの動く城」や「千と千尋の神隠し」のファンだという女性(24)だ。前日の晩、ツイッターでたまたま公開を知って来た。
「事前にもうちょっとどんな内容なのかの情報があってもよかったかも。これからツイッターでいろんな人の感想を見ようと思います」
公開5日目となる18日現在、映画情報サイト「Yahoo!映画 作品ユーザーレビュー」の評価は5つ星中2.9。星5が30%、星1が36%と賛否が分かれている。
プロデューサーで評論家の岡田斗司夫さん(65)は、16日夜のYouTube配信で、映画情報サイト「映画.com」の観客採点が3.3であることに触れ、
「『すごくいい』という人と『全然ダメ』という人にきれいにばらけている。3.3は宮崎アニメではあり得ない低評価で、本当にびっくりです」と語った。そのうえで本作を「(観客に)わかるように作ってない。でもアートとして鑑賞するとやたらおもしろい」「ジブリ初の『読み取る作品』だ」と論じた。