「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
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夏休みになりました。寝たきりで医療的ケアが必要な17歳の長女の髪の毛がかなり伸びてしまい、暑いので束ねたいのですが、私は器用ではないのでアレンジもできず困っています。
長女は首が座っていないので座位がとれず、美容院も特定のところしか行けません。近所で対応してもらえる場所がなく、子どものころから髪を切ってもらっている美容院は車で1時間以上かかるため、なかなか時間がとれず、髪を切るのはもう少し先になりそうです。
今回は寝たきりの長女の美容院事情について書いてみようと思います。
■赤ちゃんもOKな美容院
子どもが小さいうちは、自宅でママが髪をカットすることもあると思いますが、私はとても不器用なため、自分で切ることができませんでした。双子の娘たちの髪の毛は、はじめのうちはピンでとめたりしてごまかし、その後、障害のない次女は美容院に行くようになりましたが、長女は切ることができないままでした。長女は常にあおむけで寝ているので、4歳頃になると後頭部のあたりで絡まるようになり、長女の髪を切ってもらえるところを本気で探すことにしました。
そこで見つけたのが子ども専用の美容院です。通常は4歳頃にはひとりで座ってカットができると思いますが、長女にはできません。でもこの美容院は、赤ちゃんはママが抱っこしたままカットができるとホームページに書いてあったのです。長女はもう「赤ちゃん」という年齢ではありませんでしたが、状態は「赤ちゃん」のままなので、問い合わせてみることにしました。
4歳になっても首が座っていないためひとりで座れないことを伝えると、美容師さんはとても優しく「大丈夫ですよ!いろいろ相談しながら切りましょう」と言って下さり、ホッとして予約をしました。