■障害ある社員も担えるよう、業務の再設計に知恵を絞る

 そんな中、ニーズを懸命に探り、ホスピタルグレード(病院における清掃レベル)を満たすため、21年9月から除菌率99.9999%のカナダ社製の洗剤を使用する新たな清掃システムを導入。コロナ禍を経て、職場の衛生に関する社員の感度が上がったことに着目した安心度の高い業務提案が好評を得たという。

 メールサービスもニーズに合わせて業務内容を一新した。コロナ前は会社宛てに届いた郵便物を社員の席まで届けるのが主な業務だった。これがコロナ禍以降のフリーアドレス化に伴い、固定した席に届けるのが不可能になった。追い打ちをかけたのがペーパーレス化だ。校正紙などの紙媒体を担当者の席に届ける業務そのものが消えた。

 同社は新たな業務を掘り起こすため、在宅勤務中の社員にヒアリングを重ねた。そして、会社に届いた荷物を社員のパソコンにメール通知するサービスをスタートした。希望者には開封の上、中身をスキャンして画像をメール送信する。また、昨年からは出社時に指定された時間・場所に届ける配達サービスも始め、これにより、社員の利便性が増し、郵便物の滞留も大幅に減らすことができた。こうした業務開拓を担う中核が、「ジョブサポートセンター」だ。障害者と指導員、パートスタッフの三者でチームを構成している。

 指導員は障害者を特性に応じてサポートする支援のプロだ。同社はその役割の根本から見直しを図った。これもコロナ禍以降の変化が作用している。

「コロナ禍以降は特に、すぐには障害者の社員に任せられない難易度の高い業務依頼が増えました。しかし断れば、その部門からは二度と依頼が来なくなります。このため、パートスタッフがいったん業務を引き受けた後、障害のある社員も無理なく対応できる業務への再設計に知恵を絞る役割を指導員に求めました」(同)

 同社は指導員の研修・育成システムを刷新。24のチェック項目からなるスキルや職場のニーズに合わせた育成計画を練り、個々の特性に応じた目標を設定した。昨年、その成果が評価され、人材領域で優れた取り組みを行っている企業を表彰する日本HRチャレンジ大賞イノベーション賞を受賞。同社はこうした指導員の育成プログラムや、業務の再設計に関するノウハウをすべてホームページで公開している。茶谷さんは言う。

「すべての企業で応用可能と考えています。国内外を問わず、障害者雇用の質の向上に寄与できれば本望です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年7月24日号より抜粋

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