「同じクラブでずっとやってきて、お互いが大きくなって『そろそろデュエットをやるんだろうな』とクラブのコーチ達の中でも思ってはいたこと。そこから、このような結果をとれる選手になるとは……嬉しく思っています」

 川合コーチは「すごく仲良しな姉弟」と2人をみている。

「家族なので遠慮がなく、もっとやってほしい時はお姉ちゃんからビシッと言います。最近では弟の陽太郎の方からも、『もっとこうしたい』という発言が出たりします」

 今まで自信なさげだった陽太郎だが、昨年の世界選手権を経験し金メダルへの意欲が芽生えたことで、「お互い言い合えるようになったのかな」と川合コーチは語る。

 表彰台の一番高いところに上った陽太郎は、「自分の力で金メダルに貢献できたところも、少しはあると信じている」と自負している。

「それぞれの長所と短所を補いながら、2人で金メダルをとれたのが良かったです」

 その翌日、陽太郎はアクロバティックルーティン(以下AR)決勝に出場、銅メダルを獲得している。ARは、2024年パリ五輪から新たに加わる種目だ。さらにパリ五輪では、チーム種目のメンバー8人のうち、男子は2人まで出場できることも決まっている。陽太郎は、日本男子として初の五輪AS代表となる道を着々と歩んでいるのだ。

「全国の男子AS選手に、憧れるような選手になりたいと思います」

 力強く語る陽太郎は、これからも歴史を作り続ける。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

[AERA最新号はこちら]