世界水泳選手権のASミックスデュエット・テクニカルルーティンで金メダルを獲得した佐藤陽太郎(手前)と姉の友花(奥)
世界水泳選手権のASミックスデュエット・テクニカルルーティンで金メダルを獲得した佐藤陽太郎(手前)と姉の友花(奥)

「今、自分達の首に金メダルがかかっていることが信じられない。『夢なんじゃないかな』と思うぐらい幸せです」

【写真】史上最年少14歳で代表入り 日本AS界の期待の新星がこちら

 世界水泳選手権・アーティスティックスイミング(以下AS)のミックスデュエット・テクニカルルーティン(以下TR)に姉の友花とのペアで出場し優勝した佐藤陽太郎は、表彰式を終えて満ち足りた表情をみせていた。

 佐藤姉弟のデュエットは昨年の世界選手権でもミックスデュエットのTR・フリーで銀メダルを獲得しているが、新ルールが導入された今シーズンは過去の成績が意味を持たない状況になっている。重圧もあったはずだが、陽太郎は尊敬する姉と励まし合って自国開催の大舞台に臨み、最高の結果を残した。

 新ルールで行われている今大会では、申請した通りに技を行えないとDD(Degree of Difficulty、難度点)が最小になる“ベースマーク”をなくすことが順位を上げるための必須条件になっている。予選では一つのハイブリッド(高難度の足技)がベースマークと判定されて3位だったが、水面からの角度が低すぎてアンバランスではないとされた“アンバランスツイスト”の角度を意識して練習した2人は、本番ではベースマークなしで泳ぎ切った。

「昨日の演技でベースマークをとってしまって焦りがすごかったところはあるけれども、『とにかく落ち着いて、自分が今までやってきたことを信じて、一つひとつこなしていけば絶対に大丈夫だ』と2人で励まし合いながら臨んだ試合でした」

 そう語る陽太郎は、2021年の東京五輪では代表入り(補欠で出場はなし)も果たした友花の背中を追って歩んできた。ASは男子選手が少なく、友花は陽太郎から競技を続ける難しさを聞かされていたという。弟からの悩み相談に応える意味もあったのか、2019年の冬、友花は陽太郎にミックスデュエットを組もうと誘っている。友花は、当時を振り返った。

「私が混合デュエットに誘った結果がこの金メダルにつながっていると思うと、『2019年の私、良くやったな』と思います」

 友花が陽太郎とのミックスデュエット結成を申し出たジョイフルアスレティッククラブの川合真与コーチは、今大会でも日本代表コーチとしてプールサイドに立っている。

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「全国の男子AS選手に、憧れるような選手になりたいと思います」