清潔な羽田空港で清掃する新津春子さん(朝日新聞出版)
清潔な羽田空港で清掃する新津春子さん(朝日新聞出版)
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 今年の夏も暑い。とても暑い。そんななか、エアコン掃除をしてくれる方がいる。ゴミ収集をしてくださる方がいる。昼夜を問わず、介護をしてくれる方がいる。日本中どこまでも、荷物を運んでくださる方がいる。その仕事をしてくださっている人たちに敬意を払う、そんな「あたりまえのこと」ができているだろうか? 仕事って何? 誇りって何? 夏休みを前に、親も子どもと一緒に考えたい。そこで、8年連続清潔さ世界一の羽田空港を支える凄腕清掃人・新津春子さんの著書『世界一清潔な空港の清掃人』(朝日文庫)から、新津さんの心温まる言葉を、一部抜粋・改編して紹介する。

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*  *  *

 羽田空港ターミナルの清掃員として働き始めてすぐのことです。

 お客様が私の目の前にゴミをぽいっと投げ捨てて行きました。すぐそばにゴミ箱があるにもかかわらず。「お前が拾って当然だ」という態度です。そう考えてすらいなかったかもしれません。

 清掃員はまるで召し使いか透明人間。そんなふうに扱かう人は少なくありませんが、そのような仕打ちをされても、清掃員は何も言い返すことはできません。憤りの感情は飲み込んで、黙ってゴミを拾い、清掃を続けます。

 父親は第2次世界大戦の時に中国に取り残された残留日本人孤児で、中国生まれの2世。17歳のときに家族で日本へ移ってきて、日本語も満足に話せない高校生の私に見つけることができた仕事は、清掃のアルバイトだけでした。私が学費や生活費を稼かせぐことができたのは清掃の仕事があったおかげです。私は自分でこの仕事を選びました。

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 清掃の技術をひとつひとつ身につけていって、羽田空港で働き始めたのは24歳のときです。今の第1ターミナルができて少し経たったころです。それから1998年に国際線ターミナル(第3ターミナル)ができて、2004年には第2ターミナルができました。最近では、2014年3月に国際線ターミナルがリニューアルされましたね。利用者がどんどん増えて、空港はどんどん大きくなっていきました。

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