一部のポケモンカードが高額化したため、窃盗事件が全国で相次いでいる。
白熱する人気の裏で、関係者の思いは。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。
* * *
ポケモンカード(ポケカ)の窃盗事件が相次いでいる。5月に熊本県の専門店で約600枚が盗まれ、4月に東京・秋葉原の店で約1500枚が盗まれた。
ポケカは1996年、ゲームボーイの「ポケットモンスター」に続いて発売された。アニメの人気もあって、ポケカは子どもを中心に流行した。それがここ5年ほど、再びブームとなっている。
秋葉原の「晴れる屋2」はビル1棟がポケカ専門店。6月のある週末、小中学生とその保護者や大人で混み合っていた。晴れる屋2の渡辺翔店長は言う。
「発売当時、ポケカを楽しんでいた子どもたちが、26年の時を経て、大人になり再びポケカに戻ってきています」
再ブームのきっかけは、2016年に話題になった「ポケモンGO」の存在が大きいと渡辺店長は考える。
■あらゆる世代に認知
「ポケモンがあらゆる世代に認知され、ポケモン自体がブームになりました」
実際に、市場が拡大している。一般社団法人「日本玩具協会」によると、22年度のトレーディングカードの市場規模は玩具全体で最大。5年前の3倍近くだ。
ポケカの新品は、1パック180円ほどで、ランダムで5枚入っている。新品は1枚あたりに換算すると、数十円だ。いま高額化しているのは、限定配布された一部の中古のカードだ。例えば、晴れる屋2で最高額の在庫は、1億2千万円のカード。25年前、雑誌「コロコロコミック」の企画で配布された一般に流通しない幻のカードだ。アメリカでは状態のいい同じカードに当時のレートで約5億8千万円が支払われた。
「昔のカードは今より供給量が少なかったこともあり、骨董品としての価値が付いています」(渡辺店長)
新しい中古でも、高額なカードがある。カードにはそもそもレアリティー(カードの希少性を表す)が決められている。もっともレアとされているのが「SAR(スペシャルアートレア)」。カードのデザイン性が高く、一目で特別なカードだとわかる。人気があり、中古市場で数十万円の値が付くカードもある。渡辺店長は言う。
「多くの方がポケカのレアカードは価値が高いものであると思っているので、特定のSARに人気が集まり、高額になりやすくなっています」