紀州産の棕櫚にこだわったたわしはつややか!
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手作りの高級たわしは手作業できっちりと巻き上げていきます
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棕櫚の木。高田耕造商店がある和歌山県はかつての一大産地でした
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日本百貨店では今日も新しい出会いが生まれています
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鈴木さんおすすめ 高田さんちのたわし キャンディー&ドーナッツミニセットご購入はこちらから
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 日本百貨店の鈴木正晴です。日本のモノづくりとスグレモノをテーマとした出会いの場“日本百貨店”。今回は“おやじ”について少しお話させていただきます。

 私自身は40歳になりましたが、いまだに一番怖いのはおやじです。まっすぐ目を合わせることもなかなかできない。小さい頃はそんなことなかったんですが、中学くらいからですか、男同士の照れもありますが、何よりもおっかなくてしょうがない。何かがあるたびに、おやじが心配するだろうなとか、おやじはなんて言うんだろうなんて思いながらも、素直に話を聞きにいくこともできず、たまに会ってもほぼ無言。何か用があるときは、お互いおふくろを通じて話すという不思議な光景。女性にはわからないかもしれませんが、周りに聞いてみるとそんな男同士は多いようです。高倉健さんじゃないけど男は全員不器用なところがあるんです。

 今回ご紹介するのはかつて棕櫚(しゅろ)の一大産地として有名だった和歌山で、棕櫚を用いたたわしを作り続ける「高田耕造商店」(和歌山県海南市)。6月と言えば父の日で、この数年父の日が近くなると思い浮かべるのが、うちのおっかないおやじと、こちらの高田さん一家のことなんです。

 出会いは未だに頭に焼きついています。3年ほど前です。国産のたわしというものに非常に興味があり、数回の電話でのやり取りの後、高田さんが日本百貨店を見てみたい、とおっしゃられたので、「わざわざ和歌山からお越しになるんならお店見てもらった後に飲みにいきましょうよ!」とお誘いし、お待ちしておりました。そしたら何といらしたのが7名!! 高田さんがおひとりでいらっしゃるのかと思ったら、奥様、職人さん3人、そして、息子さんが2人。高田さんの一言がふるっていた。

「鈴木さん、これが高田耕造商店です。このメンバーでたわしを作り続けています」

 えらく散財しましたが(笑)楽しい時間を過ごさせていただきました。

 たわしというと、某テレビ番組での“残念賞”が思い起こされます。固くて安くてあんまり使わない、どうでもいいもの、というようなイメージ。ところが高田さんのつくる国産たわしは、柔らかくて優しい。そして、値段も高い。これは売るのが難しい。棕櫚という自然のやさしさを未来につなげるために、かつて棕櫚の一大産地であった和歌山で、非常にハードルの高い商売を続けている高田さん一家。息子さんは大輔さんと尚紀さん。お二人はそれぞれのやり方で、おやじのたわしづくりを支えています。大輔さんは得意の営業、尚紀さんはどちらかというとモノづくりのほうなのかな。家族と仲間で支え合いながら、一つの目標に向かっていく。おやじがサラリーマンだった私には想像のできない生活スタイルでした。こうやって一つ一つ、大切に物事が語り継がれていくのですね。

 高田さんが日本百貨店で実演販売をしてくれることがあります。初めての実演販売には、お父さんと尚紀さんがいらっしゃり、お客さんにどう喜んでもらうか、楽しんでもらうか、ああでもないこうでもないと、いろんな議論を戦わせる姿を見させていただきました。和歌山弁なので喧嘩していてもコミカルに見えるんですがね。

 どうしても必要なものではない。その上、作り方にこだわるから、少し高くなってしまう。すごく売りにくい商品、国産のたわし。それでも愛情に満ち溢れた“やさしいたわし”は、一度手にすると「生活の必需品」に変わります。是非一人でも多くの人に手に取ってもらいたい。そして和歌山の高田さん一家のことを思い浮かべながらそのやさしさに触れてもらいたい。そんな気持ちでずっと売り続けています。

 高田家を見ているとすごくうらやましくなります。おやじとこんな風にいろいろ話してみたいなと思うけども、やっぱり僕はどこか恥ずかしいから、今のまんまなのかなと。大学を出て働き始めて、もう18年になります。根気がなくて、サラリーマンは9年しか続けられなかった。40年以上もサラリーマンを続けていたおやじに敬意を表して、このたわしをプレゼントしてやろうかと思ったけども、なんでたわしなんだと怒られそうな気もします。