大阿久佳乃(おおあく・よしの)/2000年、三重県鈴鹿市生まれ。文筆家。17年からフリーペーパー「詩ぃちゃん」を発行。著書に『のどがかわいた』(岬書店)、月刊「パンの耳」1~10号、「パイナップル・シューズ」1号など(撮影/MIKIKO)
大阿久佳乃(おおあく・よしの)/2000年、三重県鈴鹿市生まれ。文筆家。17年からフリーペーパー「詩ぃちゃん」を発行。著書に『のどがかわいた』(岬書店)、月刊「パンの耳」1~10号、「パイナップル・シューズ」1号など(撮影/MIKIKO)
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 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。


 文筆家で大学生の著者・大阿久佳乃さんが、小説や詩とともに生活すること・生きること・感じることについて書いたエッセイ集『じたばたするもの』。自ら発行する冊子で書いたアメリカ文学中心の海外文学に関する文章に、書き下ろし6編を加えた18編を収録。紹介するのは現代作家の小説や詩、戯曲、北米先住民の口承文学。静かに読むのもいいが、気になる引用部分を声に出してみたり、誰かと声を出し合ってみたりするのも面白い一冊だ。著者の大阿久さんに同書にかける思いを聞いた。


*  *  *


 文筆家の大阿久佳乃さん(23)は、現役の大学生だ。大学に入ったものの新型コロナウイルスの影響で授業がオンラインに変わり、「人と隔てられた時間」を長く過ごした。孤独に陥り「生気の抜けた状態」だった時期、生の実感をもたらしたのがアメリカ文学だった。アメリカ文学は、じたばたしているものが多いという。


「じたばた」について、本書でこう説明する。


<私の好きな小説の主人公に共通しているのは欺瞞やごまかし、半端な妥協に溢れているにもかかわらず平気な顔をして回り続ける世界への苛立ちを持っていることだ。苛立つのはそれが変わるのをどこかであきらめきれていないからだ。そしてこの間違った回り方をしている世界に馴染むまいとし、じたばたする>


 好きなアメリカ文学・海外文学を1作ずつ紹介し、それらとともに生活し、生きて、感じる日々を綴る『じたばたするもの』。18編のエッセイは2021年1月から22年4月までの間に書かれたもので、海外が舞台の詩や小説の紹介だからこそ、視界を遠くに広げられる。


 大阿久さんは「私」という一人称で本と対話をする。


「私は共通点に目を向けがちなところがあります。そしてどんな有名なものであれ、どこの国のものであれ、全部自分と同じ土俵に立たせようとする傾向が自分の中にあります」

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