日本の母子世帯が置かれた現状は厳しい。相対的貧困率は先進国でワーストだ。背景には女性の賃金の低さや長時間働けず、非正規雇用も多いことがある。そんななか、シングルマザーに寄り添う人材会社が出てきた。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。
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日本のひとり親世帯は今、世界に類を見ないほどのワーキングプア状態に置かれていることをご存じだろうか。
その就労率は母子世帯で86.3%と先進国で最も高いにもかかわらず(経済協力開発機構=OECD平均は73.4%)、相対的貧困率は48.3%と先進国ワースト1位(OECD平均は31.9%)を記録する。それも母子世帯の平均年収272万円(2021年)を見れば当然だ。
親の貧困はそのまま、子どもの貧困を意味する。母子世帯の大学進学率は41.4%と、全世帯平均(54.9%)を下回る。大学に進学するなら親は教育ローン、子は奨学金という莫大(ばくだい)な借金を背負うことになる。これはそのまま、私自身と息子2人に当てはまる。
国が依然として抜本的な改善策を示さない状況下、シングルマザーが生きやすい社会を作ろうという、これまでにない新たな動きが生まれている。
その一つが「働き方」に注目し、今までにない労働システムを提唱・実践する、「Tsumugu Works(つむぐ ワークス)」社長の小原光弘さん(29)だ。社のサイトには、「安心できるくらしを、シングルマザーに」と、堂々と謳(うた)う。
「僕が最も心が揺さぶられたのが、親子の問題でした。今、シングルマザーの問題は解決すべき大きな社会問題ですから、ここを変えていかないと」
直接的なきっかけは、「子どもの貧困」という番組だった。すぐにシングルマザーの支援団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」に連絡して1年間、就労支援スタッフとして働いた。小原さん自身、大学卒業後に2社でビジネスを学んだ後、25歳で独立。フリーの営業として、インサイドセールス(内勤型営業)で実績を上げていた。