「ワーキングプアの問題っていろいろ要因がありますが、そのセンターピンは労働問題だと、僕は思うんです。長時間労働を前提とした正社員か低収入のアルバイトか、給料か時間か、その2択しかない働き方がおかしい」

■シングルマザーが在宅で働ける「パート正社員」

 起業したのは22年9月、「シングルマザー専門 インサイドセールス支援事業」として、営業の工程を分業化し、シングルマザーが在宅で電話や手紙などを駆使してアポイントや商談成立までを請け負う。一方の委託した企業は、コアとなる営業業務に集中できるというメリットを得るものだ。

 ここで小原さんが打ち出した“新しい働き方”が「パート正社員」という制度だ。待遇は正社員として無期雇用、賞与、夏季・冬季休暇、有休、社会保険完備、昇給あり。時給は1600円と高給でありながら、働き方としては完全在宅、実働8時間、完全週休2日制で土日休み、1時間単位で有休が取れるため、子どもの学校行事や通院など臨機応変に動くことも可能で、子どもとの時間を大切にしながら、十分な対価を得ることができる。この正社員とアルバイトの中間に位置する「パート正社員」こそ、日本初の労働システムだと小原さんは胸を張る。さらに「ママ会」という、同僚であるシングルマザー同士がオンラインで話し合える時間を作り、ここにも時給を発生させた。孤立していた、シングルマザー同士の分かち合いが大切だと思ったからだ。

仕事中の巴山さん。スタートにあたってのトレーニングは、オンラインで3時間ほど。7.5時間で50件架電、メール送信数30件が目標(撮影/横関一浩)
仕事中の巴山さん。スタートにあたってのトレーニングは、オンラインで3時間ほど。7.5時間で50件架電、メール送信数30件が目標(撮影/横関一浩)

 朝9時、巴山ひろみさん(47)は自宅のテーブルでパソコンを開く。パソコン、Wi-Fi、インカムは社から貸与されたものだ。オンライン会議で小原さんと同じチームのシングルマザー3人と一日の作業内容や分担を確認した後、パソコンでの架電作業に入る。

「商品も相手先企業のこともよく知ってないといけないし、一日中、パソコンに付きっきりです。一件でもアポが取れたらうれしいし、自分なりに自己実現できている気がしています」

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