天皇陛下と皇后雅子さまにとって、初めての国賓としてのインドネシア訪問。家庭的なもてなしをみせた大統領との親善や若者たちとの交流など、さまざまな場面から垣間見えたのは、天皇陛下が模索し続けている「令和皇室」のスタイルだった。
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インドネシアのジョコ大統領は、天皇陛下と雅子さまに、手を拭くためのタオルをごく自然な動作で自ら手渡した。おふたりが手をぬぐうと、今度はそのタオルをサッと受け取った。
ボゴール宮殿の庭で、両陛下が「マラッカジンコウ」の苗木を植えた際のひとコマだ。
大統領はこの後、自らカートのハンドルを握り、夫人と両陛下を乗せて植物園を案内。大統領はユーモアたっぷりな人柄のようで、両手をハンドルから離しておどけてみせた。夫人が「もう」といった表情で大統領の背中を叩くと、陛下も雅子さまも大笑いした。
こうした光景を、宮内庁職員として長く務めた皇室解説者の山下晋司さんは、驚きをもって見ていた。
「今回、天皇陛下は国賓としてインドネシアを訪問し、ジョコ大統領も元首という立場。大統領自ら、使い終わったタオルを受け取った場面には、驚きを隠せませんでした。これほどフランクな接遇は、見たことがありません。
国賓での訪問となれば儀礼を重んじ、格式ばった接遇を受けるのが一般です。しかし、ユーモアと家庭的な温かさを感じさせる大統領のおもてなしは新鮮で、新しい時代を感じさせるものでした」
■「おことば」中止の意味
今回の訪問での大きなサプライズは、6月19日の昼食会で、これまでの慣例となっていた陛下の「おことば」の取りやめだろう。
翌日には、ジャカルタにあるカリバタ英雄墓地への訪問を控えていた。インドネシアのために力を尽くした、およそ1万人の政治家や軍人、文官ら、そして太平洋戦争後もインドネシアにとどまってオランダとの独立戦争に加わった残留日本兵が眠っている場所だ。