部下に指摘すべきことを見極めるための「紙1枚」
部下に指摘すべきことを見極めるための「紙1枚」

 さて、最後となる3つめの本質条件は「ヒトではなくコトを叱責する」。

 これは、部下が「人格まで否定された」と感じないようなスタイルで、叱責すべき時はしていこうという意味です。

 具体的にどうすれば良いのかというと、これも「紙1枚」で対処できます。

 図のような「1枚」フレームワークを作成し、叱責しなければならないポイントについて、まとめていけば良いのです。

 そして、ここからが最重要なのですが、この「紙1枚」の内容を相手に伝える際、たとえば対面であれば、できればこの枠組みをホワイトボードに書いてから、部下と話をしてほしいのです(もちろん、他の部下には見えないよう会議室等で)。

 加えて、実際に話をする時は本人に面と向かってではなく、できるだけこの「紙1枚」に向かって叱責をしてほしいのです。

 このスタイルなら、「部下自身というヒト」と「叱責したいコト」が物理的に分離された「見え方」でコミュニケーションができますので、相手が「人格まで否定された」と誤解するリスクを、劇的に下げられます。

 オンラインの場合は、この「紙1枚」を画面共有し、同様のスタンスで話をしていけば大丈夫です。

■部下を叱責したくなった時も「紙1枚」

 そもそもこの「紙1枚」は、多くのパワハラマネジャーが「口頭のみで、即時で、感情任せに」叱責しているという共通点を洞察し、そこから導き出した処方箋になります。

 実際、かつて鬼軍曹とまで評されていた厳しいマネジャーの受講者さんがいらっしゃったのですが、その方にこの方法を伝えたところ、部下とのトラブルが劇的になくなったと感謝されたことがあります。

 その元・鬼軍曹の方の感想としては、「紙1枚」にまとめてから指摘するというワンクッションを挟むことによって、そもそも感情任せにその場で叱責することがなくなったそうです。

 加えて、前述の通り相手ではなくホワイトボードに向かって叱責するので、「あくまでも自分は人ではなく課題について指摘しているんだ」という自覚が生まれ、過剰に怒ってしまう自分を客観視し、抑制することにもつながったようです。

 その結果、怒り方自体もマイルドになり「随分と丸くなりましたね」とまで言われるようになったと、満面の笑みで話してくださいました。

 このように、「紙1枚」を活用することで「感情のマネジメント」も可能になってきます。

●浅田すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス株式会社代表取締役。「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。作家・社会人教育のプロフェッショナル。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車(株)入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、(株)グロービスへの転職を経て、2012年に独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。著書に『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)、『早く読めて、忘れない、思考力が深まる 「紙1枚! 」読書法』(SBクリエイティブ) などがある。

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