ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(享年87)の長年にわたる少年への性加害疑惑を全世界に伝えた英放送局BBCのドキュメンタリー番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)」は、日本でも大きな反響を呼んだ。番組を見て驚かされたのは、番組制作者が日本におけるジャニーズ事務所の立ち位置を非常によく理解していたことだ。この調査報道を行った中心人物であるBBCのプロデューサー、メグミ・インマンさんに尋ねると、その謎がとけた。彼女はジャニーズタレントのファンだったのだ。
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「私は卒業式でSMAPの『夜空ノムコウ』を歌ったんですよ」
メグミ・インマンさんはそう言いながらほほ笑んだ。
日本人の母と英国人の父を持つインマンさんは東京で生まれた。生後しばらくして渡英し、9歳のときに来日。小学校4年生から中学校3年生まで日本で暮らした。
「あのころ、私はただの日本人の少女でした。『SMAP×SMAP』とか、(V6のメンバーが出演した)『学校へ行こう!』などのテレビ番組をよく見ていました。彼らと一緒に成長してきたような感じで、本当に親しみを持っていました」
数多くの音楽番組やドラマに出演していたジャニーズの歌手やタレントについて、当時は、何の疑問も持たずに楽しんでテレビを見ていた。
「でも、14歳のときに日本を離れると、ジャニーズがいかにユニークで、日本人にとって特別な存在であるかに気づきました。多くの日本人にとって、今回の番組が明らかにしたことは、不愉快な真実であり、信じたくない出来事だったと思います」
実は、インマンさんもその一人だったという。
「詳しく調べ始めると、少年たちのキラキラした映画のような活動の裏にある闇が見えてきました。とても暗い感じがして、信じたくない思いがしました」